【熟成肉】プロ技!熟成と腐敗は背中合わせ!
2019.8.15

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熟成肉はその名の通り、熟成された食肉のことです。
ここではドライエイジングで熟成された熟成肉についてお話ししていきますが、そもそも肉の熟成ってどういうこと?という基本の部分は一般的にはあまり深く知られていないかもしれません。
そこで、ここでは熟成とはつまり何なのか?と、熟成と腐敗の違いはどこにあるのか?についてお話ししたいと思います!

熟成方法であるドライエイジングとウェットエイジングの違いについては、こちらの記事を読んでみてください。
>>>【熟成肉】ドライエイジングとウェットエイジングの違い<<<

熟成は肉を美味しくする技術

熟成とは、食材を美味しくする技術です。
熟成する事であらゆる食材を美味しくする事ができます。
『超熟成パン』とか言いますよね。あと、『完熟の甘いトマト』なんて美味しそうな文句も目にします。
食肉に関しても同じで、肉を美味しくするために熟成します。
人間は遠い昔から食材を美味しく食べたり保存するための方法を考え、技術を磨いてきました。
多分最初の最初は、肉でも野菜でも全部生で口に入れていたはずです。
でも煮たり焼いたり茹でたり、燻製にしたり発酵させたり…とどんどん新しい方法を考えて人間は美味しいものを食べるようになりました。
熟成もその手段の1つで、美味しく食べるために熟成させているから熟成肉は柔らかくて旨味が濃縮され、良いフレーバーを感じることができるということなんです。

熟成するとなぜ美味しくなるのか?

熟成すると肉が美味しくなるとわかったところで、ではなぜ熟成すると美味しくなるのでしょうか。
これに関しては微生物が作用して熟成が進むと言われる事もありますが、実は科学的には微生物は関係ないとされています。
ちょっと理屈っぽい風に説明すると、食肉の内部にあるタンパク質が内因性の酵素によって軟化し、アミノ酸が増えて食味性が増す。
こんな感じです。
簡単に行くと、肉の中のタンパク質が酵素と合わさると肉が柔らかくなる。アミノ酸のお陰で肉が美味しくなる。
こんな感じだと思います。
そもそも正直なところ、熟成肉の美味しさに本当に微生物は関係ないのか?というと、ハッキリわかっていません!
柔らかさや旨味については酵素やアミノ酸のパワーが働きますが、熟成肉ならではのあの独特なフレーバーはもしかしたら微生物のパワーかもしれないし、もしかしたら微生物なんて関係ないかもしれない。という謎が多い状態です。
このフレーバーが作られるメカニズムは、今もまだまだ研究段階となっています。

熟成・発酵・腐敗の違いとは?

腐敗と発酵は、科学的に言うと全く同じ事が起こっている状態です。
腐敗&発酵は比較される事が多いですが、この2つのメカニズムは同じで『微生物が有機物を分解することで新しい物質が作られる』というもの。
仕組みは全く同じですが、【人間にとって良いもの=発酵】で【人間にとって害のあるもの=腐敗】ということになります。

熟成は腐敗との戦い!

微生物の働きで腐敗が起こるという事でしたが、熟成の過程で食肉に微生物が付いてしまうと当然ながら肉は腐ってしまいます。
熟成を進める時に一歩間違えば、微生物や悪い菌が増殖してどんどん腐っていってしまう危険があるという事です…
なので、食肉の熟成は常に腐敗との戦いです!
腐敗を進めないように注意しながら熟成を進めなければならないので、高い技術が必要になります。

もともと食肉に微生物はいない!

微生物の活動によって発酵する=美味しいものができる!と前述しましたが、食肉には本来微生物は存在しません。汚染されていなくて、とてもキレイなものなんです。
微生物が食肉に汚染されるリスクは、と畜→解体→骨を抜いて整形→加工→精肉→販売という1つ1つの工程の全てにあります。
全ての段階で微生物汚染の可能性があり、汚染しないように注意して行う必要があるんです。
工場から肉が卸された後、真空パックを開けた時にも汚染のリスクが潜んでいます。
食肉は栄養が豊富なので、微生物も大喜びで寄ってきます。そして栄養満点だからこそ、微生物が元気に繁殖してしまうということなんです。

腐敗させない熟成に必要なのは菌叢管理!

ドライエイジングの手法で食肉を熟成させる際に重要なのは、温度管理・湿度管理・菌叢(きんそう)管理です。
温度が高くなると酵素の反応が良くなって熟成が進みますが、同時に微生物の活動も活発になります。
なので、温度によって熟成が腐敗に傾いて腐ってしまわないように気をつけなければなりません。
ここで食肉が【熟成<腐敗】の構図にならないためには、悪い菌や微生物が熟成庫内に存在しない事が何よりの条件です。

無害な菌で熟成肉の安全を確保する!

トリミング前の熟成肉の写真を見ると、多くは周りにぼわぼわした菌が付いているのが確認できると思います。
菌がいたらダメ!微生物の汚染は敵!…と散々言ってきましたが、温度・湿度・菌の管理をしっかりと行っている業者の熟成肉の周りに存在する微生物類は悪さをしていません。
悪い菌が食肉を汚染する前に私たちにとって無害な菌が優勢になる事で、安全をキープする事が出来るんです。
熟成庫の中は良い菌叢=良い細菌の集まりが保たれているので、安全が確保されています。
日本に熟成肉ブームを巻き起こす発端になった海外のドライエイジドビーフも、昔から熟成を行ってきた熟成庫の菌叢が良い状態を保っているから安全で美味しい熟成肉が作られています。

小川の食肉は衛生管理力最上級レベル!

私たち小川畜産興業は、徹底した衛生管理技術に定評をいただいています。
現在大小様々なスーパーマーケットや小売店などに牛肉を卸させていただいていますが、スーパーマーケットは衛生管理が非常にシビアなことで知られています。
衛生面から見ても、実体の全容が解明されていない『熟成』によって作られるドライエイジドビーフは私たちが手がけるものでは無いと考えていました。
それでも2013年に会員制ステーキハウスのお客様からドライエイジドビーフのご要望をいただいたのをキッカケに熟成肉の取り組みを始め、トライアンドエラーを重ねて今はスーパーマッケットの店頭にもドライエイジドの熟成肉を並べていただいています。

徹底検査と技術で作る熟成肉

最初は専用の冷蔵庫の中で食肉の熟成に取り組み、あっさりと腐らせて失敗に終わりました。
それからはニューヨークへの視察や国内のドライエイジング技術に優れた業者さんに学びながら熟成庫での熟成技術を一歩一歩確立していき、今があります。
熟成というとにかく未知で科学的に説明しきれないものを扱うので、スーパーマーケットや小売業の方に信頼されて商品を卸して多くの方に食べてもらうために菌数検査で安全を担保すべきだと考えているので、週に1回は必ず菌数検査を行っています。

トリミング技術に自信あり!

熟成庫内の環境管理とともに自信があるのは、トリミングの技術です。
先ほども少しお話ししたように、ドライエイジドの熟成肉の回りには微生物や菌が付着していますが、これを絶対に内部の肉に付着させない!というのが1番です。
なので、トリミングの厳密さと技術には自信を持っています。
腐敗しないように熟成庫で熟成を進めることはもちろんですが、その熟成肉を出荷するまでの段階で仕上がった熟成肉を汚染させて腐らせないように確実な仕事をしています。

熟成庫〜出荷までが腐敗との戦い

食肉をドライエイジングするために熟成庫に入れて細菌汚染や腐敗をさせないように気をつけながら熟成を進めますが、熟成した肉を熟成庫から出した後も汚染や腐敗のリスクはあり続けます。
なので、私たちに限らずドライエイジングの技術のある食肉業者は知識と技術を身につけるために時間をかけて熟成肉を作り上げています。
安心して美味しい熟成肉を楽しんでもらうために、ぜひ信頼できる業者から納得できるドライエイジングビーフを選んで多くのお客様に提供していただければと思います。

小川畜産興業は熟成を始めてからトリミングして出荷するまで徹底した菌数管理と技術力で美味しい熟成肉をお届けします!