食肉の熟成方法は1つではなく、『ドライエイジング』と『ウェットエイジング』があります。
“熟成肉”として多くの人がイメージするのは、ドライエイジングされた牛肉です。
じゃあウェットエイジングと何が違うの?という疑問を持つ方も多いと思いですよね。
ここでは食肉の熟成方法とドライエイジング・ウェットエイジングの違い、そして熟成肉の特徴と魅力についてご紹介したいと思います。
ウェットエイジングとは何か
ウェットエイジングというのは、真空包装した状態で食肉を熟成させる方法です。
専用の熟成庫の中で風に当てながら乾かすドライエイジングに対して、食肉を真空包装した状態で置いておくことで肉を熟成させることができます。
真空パックの技術が発達したことで食肉の雑菌繁殖を抑えながら長期保存することが可能になり、真空パックした状態で肉の熟成を進めることができるようになりました。
ウェットエイジングのメリットは『歩留まり』
ウェットエイジングのメリットは、歩留まりが良いということです。
ドライエイジングの熟成肉は乾いた部分を食べることができないので、ドライエイジング後の食肉の30%程はトリミングしてロスとして捨てざるをえませんでした。
真空パックの技術がない頃はみんなドライエイジングで熟成を行なって食肉を保存していましたが、毎度毎度30%もの食肉が廃棄になるというのは非常に大きなロスになります。
真空パックの登場でウェットエイジングが可能になり熟成後のトリミングの段階で大きな差がつくようになったので、歩留まりが圧倒的に良いというのがウェットエイジングの何よりのメリットとなりました。
ウェットエイジングでは熟成フレーバーが出ない
ドライエイジドビーフの特徴や美味しさの1つに、独特のフレーバーがあげられます。
ドライエイジングによって食肉が変化して独特のフレーバーが醸造されますが、ウェットエイジングではこのフレーバーの醸造がされにくいようです。
熟成した時に変化に欠けるというのがウェットエイジングのデメリットと言えます。
トリミングでのリスクが少ない
ドライエイジドビーフはトリミングの際に熟成された食肉の表面に付いている微生物に非常に気を使って作業します。
出荷される内部の肉に菌や微生物が付かないように注意が必要なんです。
内部の肉に微生物が付けば肉が汚染される危険があり、細心の注意が必要です。
ウェットエイジングにも同じことは言えますが、この点ではドライエイジングの方がリスクが高いです。
ドライエイジングとは何か?
ドライエイジングは、低温で風を当てて乾燥させながら食肉を熟成させる方法です。
大切なのは温度と湿度、そして熟成庫内の菌叢の管理!
食肉に含まれている水分が徐々に表面へと移り、蒸発していくことで肉の乾燥が進みます。
この時に肉の内部では酵素の働きによって肉が柔らかくなっていくんです。
屠畜されると死後硬直が起こって肉が硬くなりますが、この硬くなった肉は美味しくいただくには適していません。
そこで熟成させて肉を軟らかくするわけです。
死後硬直した硬い肉を低温におくことで熟成が進み、その中でタンパク質が分解されることで肉が柔らかくなります。
そして旨味の素であるアミノ酸が生成されて増えることで、旨味が増していくんです。
この過程を経て熟成された熟成肉・ドライエイジドビーフは、独特のフレーバーが感じられる特徴を持った魅力的な肉となります。
ドライエイジングの魅力は『風味』の変化
ドライエイジドビーフは、独特のフレーバーを感じられるのが特徴です。
熟成する牛の品種やその部位によって変化のしかたが変わり、フレーバーも変わります。
この独特の風味はウェットエイジングではあまり感じられず、ドライエイジングならではの魅力です。
ドライエイジングされた熟成肉独特のフレーバーについては、なぜ醸造されるのかなどハッキリとした事は分かっていません。
ドライエイジングで起こる食肉の変化の科学的な仕組みについては、実はまだまだわからない事だらけで研究されている途中です。
どんな肉も美味しく変化する!
ドライエイジングによって今まで食肉として美味しくいただけない…和牛に比べると劣る…といった評価を受けていた種類の肉であっても美味しくいただけるようになります。
和牛などの肉用種に比べてホルスタインなどの乳用種の食肉は赤身がとても多いです。そして肉用種と比べて肉質が硬いという特徴があります。
ただし、赤身の肉が主流の熟成肉において、赤身が多い乳用種の牛肉は相性がいい事もあり乳用種の美味しいドライエイジドビーフはたくさんあります。
ホルスタインの肉はドライエイジングによって変化が大きく、フレーバーも独特で日本人好み。
硬くてそのままでは食べられないと言われる経産牛も、熟成させる事で非常に美味しくなります。
もともと和牛だけでなく乳用種も取り扱ってきたので、小川畜産興業ではホルスタインなどの乳用種もメインに加えて熟成肉を作っています。
歩留まりが悪いのが難点
ウェットエイジングの項目でもちょっとお話ししましたが、ハッキリ言ってドライエイジングは歩留まりが悪いです。
やはりトリミングでかなり削られてしまうので、どうしても可食部が減ってしまいます。
しかし、このトリミングに関しては衛生上絶対に省くことができません。
トリミングはとにかく手を抜かない事と技術力が求められます。
ドライエイジドビーフは、熟成庫で乾燥させながら熟成する間に微生物などが食肉の回りに付着するのが特徴です。
乾いた外側の部分は食べられないので削る事はもちろんですが、この微生物がトリミングの段階で可食部の肉の部分に付着するのは非常に危険!
微生物が付着する事で菌が繁殖してしまうと、トリミング後に真空パックをして卸した時に既にカビが生えているということもあります。
このトリミングには高い技術が必要なので、歩留まりどうこうよりも技術のある職人が正確にトリミングすることが重要です。
私たちのトリミング技術はありがたいことに高い評価をいただいており、安心・安全の高い品質のドライエイジドビーフをお届けできる自信があります!
トリミング時のリスクが高い
先述の通り、トリミングをする時の微生物による感染のリスクが高いのはウェットエイジングよりもドライエイジングです。
トリミング時に注意すべきなのは乾燥して硬くなった外側を削ることよりも、食肉の外側に付いた微生物や菌類を絶対に内部の可食部分の肉に付けないこと。
私たちが徹底するのは素早さというのもありますが、何よりも大切なのは正確さです。
菌の感染を防ぐために調理器具を使い回しないといった事も徹底しています。
小川畜産興業はスーパーマーケットなどに肉を卸させていただいている事もあり、衛生管理の徹底には定評をいただいています。
菌数検査にも力を入れ、リスクが高いと言われるドライエイジドビーフの生産とトリミングを含む加工過程、お客様へのお届けまでプロとしての自負を持って対応させていただきます!
それでもドライエイジングの熟成肉は魅力的!
ウェットエイジングとドライエイジングの違いをご紹介しましたが、いかがでしたか?
「ドライエイジングの熟成肉の方がデメリットが多くない?」と思われた方もいるかもしれません。
ですが!ドライエイジドされた熟成肉が人気になって『熟成肉』という言葉が肉食業界だけでなく一般的に通じるようになったということは、それだけ熟成肉に魅力を感じる方が多いからだと思います。
そもそも私たちが食べている食肉は、どの肉もある程度は熟成されています。
と畜されて死後硬直したそのままの肉では食べられないので、一定の時間を置いてから卸したり一般消費者の元へ流通しているんです。
ドライエイジングという特別な加工方法で熟成された肉は、一般的に卸されたり手に取って食べている肉とは一線を画しています。
独特のフレーバーと柔らかさ、旨味がギュッと凝縮された熟成肉には確かな魅力があります!
そんな美味しい熟成肉を確かな技術で安心・安全をモットーに作っていますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。
どこででも・誰にでもできる食肉の熟成方法ではありませんが、まずは熟成肉を知って、魅力を感じていただければ嬉しいです。
確かな技術で最高に美味しいお肉をご提供します!